山歩き≪槍ヶ岳〜北穂高岳≫

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2007.10.13(Sat)〜15(Mon)  「槍ヶ岳」
(長野県)


 8年ほど前、一緒に北岳を日帰りで行った山友達と、上高地から槍・穂高のループ登山を2泊3日で楽しんできました。
 今回の計画は、「上高地→槍ヶ岳→大喰岳→中岳→南岳→北穂→涸沢岳→奥穂→前穂→上高地」と3000m峰8座を巡る岩稜コースです(のはずでした・・・)。
 ちょうど最盛期を迎えた紅葉にも巡り合うことができ、槍や穂高に癒さた秋の山歩きでした。
【準備・食料】
 貧相な食事で恥ずかしいのですが、レトルトを中心に8食用意しました。その他にみかん1袋とサラミソーセージがお供です。
 食料に関して、無念なことが2つ。
 1つは、大好きなきゅうりの浅漬けを買い忘れたこと。もう1つは、食べ忘れたゆで卵がザックの中で爆発していたことです。(T_T)


 金曜の仕事を終えて、9時に横浜を出発。
 中央自動車道に乗る八王子付近の渋滞が気がかりでしたが、予想に反し、難なく八王子を通過。予想より早く諏訪湖SAに到着しました。
【諏訪湖SA】
 諏訪湖SAで仮眠をとり、目を覚ますとSAの中が登山靴を履いた人で一杯になっていました。
 「どちらまでですか?」と声をかけると、「槍ヶ岳です。」とのこと。
 涸沢も槍沢も大混雑の予感です。
【上高地バスターミナル】
 途中、158号線が沢渡近くで、工事をしていて朝の5時まで全面通行止となっていました。
 おかげで、沢渡到着が大幅に遅れ、6時半に大勢の登山客が闊歩する上高地に到着。登山計画書を提出後、靴紐を締め直し「いざ、出発!」です。
【河童橋】
 上高地はガスの中でした。
 穂高も焼岳も顔を見せてくれないので、風景の代わりに河童橋のカメラマンをパシャッ!
【徳沢へ・・・】
 今日は大勢の方が、山に入るようです。徳沢へ向かう梓川沿いの道は、前も後ろも人・人・人・・・です。
 徳沢の手前で青空が広がり、前穂が頭を出すと、皆立ち止まってシャッターを押していました。
 それでは、僕も・・・。
【氷壁の宿 徳澤園】
 山岳小説として有名な、井上靖の「氷壁」に徳沢小屋として登場する宿です。
 何故か、ここを通過する度、犬のマーキングのように、徳澤園の写真を撮っています。今回も、例に漏れず・・・。
【横 尾】
 横尾は、風景を楽しみながら身支度を整えている登山客で賑わっていました。今回は、槍沢に入るので横尾大橋を渡らず、左に見て槍沢方面へ・・・。少し進んだところで、屏風岩をパチリ!
 今回のルートでは、もう屏風岩に出会わないはずだったのですが、2日後に再開することに・・・。


【槍見河原】
  今日は、槍ヶ岳に向かう方が極端に少ないようです。横尾までの喧騒が嘘のようで、まったく人に出会いません。
 「槍見河原」では、その名のとおり、槍の穂先にご対面です。


【ババ平・大曲】

 槍沢沿いに一ノ俣、ニノ俣と越え、槍沢ロッジを過ぎて少し歩くと「ババ平」に到着。奥に見えているのが大曲付近です。
 ここから少しずつ傾斜が大きくなりますが、苦になるような坂道ではありません。ここで、一回り年上の単独行のAさんと知り合い、下山までご一緒することになりました。


【天狗原分岐】

 槍沢の紅葉を眺めながら進むと、紅葉ど真ん中の天狗原分岐に出ます。
 後ろを振り返ると赤沢山が分厚い壁のようにそそり立っています。もう少し高度を上げると、ピラミダルな常念岳が赤沢山の陰から頭を出します。
【水 沢】
 槍沢最後の水場です。冷たい水で口を潤し、少し歩くと待望の槍ヶ岳がやっと顔を見せてくれます。
 坊主岩屋前では、1パーティ、約6人の方が休憩していたので、岩屋の写真はなしです。
 それにしても、槍ヶ岳という山の自己主張は、凄いですね。「ここが日本のてっぺんだ〜・・・!」と言わんばかりに尖っています。そこに引き付けられて、来ている訳ですけどね・・・。
【槍岳山荘】
 山荘に到着すると、友人は疲れのため、即刻、バタンキュー。自炊する元気もないようなので、食事は山荘のお世話になりました。
 今日の宿泊は、50人に満たないようで、寝床もガラガラです。
 夕食は、鳥の唐揚とシュウマイで、疲れた体には小梅が効きました。
【槍ヶ岳山頂】
 翌朝は、昨夜の天気予報から雨も覚悟し、槍ヶ岳山頂での御来光は、諦めていました。ところが、朝の4時頃に「ガスってないよ。」という声が聞こえ、槍の頂上へ・・・。
 山頂はガラガラで、10名ほどで占領しました。
 頂上は風が強く、体感気温はマイナス10℃を下っているでしょうか。
 頂上から、雲海の上に頭を出している富士山、南アルプス、八ヶ岳などの風景を楽しみ、日の出を待って頂上を後にしました。


【朝 食】
 食堂の窓から、雲海と遠くに南アルプスの頂を眺めつつ、ご飯を頬張る・・・。贅沢ですね〜。至極の一時です。
 昨日、バタンキューの友人は、ご飯を3杯おかわり・・・。この食欲が、スタミナと調子回復に直結すればいいのですが・・・。
 2日目は、大キレットを越えて穂高岳山荘までの予定です。ただ、予報では雨/くもりという天気が気がかりです。
 昨日、槍沢で知り合った方と、コースの変更も視野に入れて検討し、南岳手前の天狗原へ下る地点まで、様子を見ながら前進することにしました。
 調子の悪い友人を真ん中に、最後尾を歩きます。


【大喰岳】
 槍ヶ岳山荘から、日本一標高の高い峠の「飛騨乗越(3020m)」まで一旦下り、登り返すと標高3101m、なだらかな山頂を持つ大喰岳です。振り返ると、槍ヶ岳が随分小さくなっていました。
【中 岳】
 大喰岳からザレ場を下り、少し登り返すと、標高3084mの中岳です。山頂標識に槍ヶ岳を入れてみました。
 山頂から少し急なガレ場を下り、小さな岩稜帯を巻き、穏やかな稜線を進むと天狗原への分岐です。


 さあ、いよいよ大キレットへ進むか、槍沢へ下るかの分岐点です。
 天候は、下り坂どころか快晴に向かいつつあります。
 この時、一同の気持ちはすでに決まっていました。前を歩く2人は、分岐点に目もくれず、南岳に足を向けていました。
【南 岳】
 標高3033m。ここまでくると、穂高やキレットの迫力が増してきます。

 山頂から南岳小屋に向かう途中、雷鳥に出会いました。写真中央の雷鳥が分かりますか?
 それにしても、「雷鳥さん!急な飛び出しは禁止です。」突然、登場されたときは、とってもビックリしました。
 
 さて、いよいよ難所の始まりです。
 南岳小屋からキレットの最低鞍部(2748m)まで、ガレ場を一気に下っていきます。
 日差しに当たると少し汗ばんできたので、ズボンを脱ぎ、ロングタイツ1枚になって、フットワークを軽くしました。
 キレットへは、これから通る稜線と北穂を一望しながらガレ場を下ります。写真では、キレットへ下る道が凄く急峻に見えますが、普通の下り坂で足場にガレ石はないので、問題なく下れます。


【最低鞍部】
 ガレ場を下り、最後に梯子を降りきったところが最低鞍部とガイドに書いてありましたが、実際には、もう少し下ります。
 下の写真の中央付近が最低鞍部のようでしたが・・・?
 振り返ると切り立った南岳の岩肌に圧倒されます。北穂側の南岳は力強く男らしい山です。
【長谷川ピーク】
 最低鞍部からエッジ状の道を登っていくと、長谷川ピーク(2841m)に到達します。今行動中、一番緊張したのがこの場所です。
 長谷川ピークの下りで、信州側から飛騨側へエッジを跨いで1.5mくらい降りる際、最初の一歩が足場に届きません。両腕で体重を支え、何とか足場に届くところまで体をズルズルと降しました。ナイフエッジでのことですから冷や汗ものです。
 エッジを越えて、足元を見ると飛騨側の岩陰にステップの金属棒が打ち込んでありました。しかし、上からだと見えません。女性の方は、先に越えた人に補助してもらった方が安心です。
 慎重に岩場を降りると、少し広くなったA沢のコルに出て、一息つきました。


 実は、先ほどの長谷川ピークのナイフエッジ越えのところで1つアクシデントが・・・。
 両腕だけで体重を支え、体を岩肌に付けてズルズルと這い降りて、足でステップを探しているとき、デジタルカメラが胸のポケットからスルッと落ちたのです。
 「アッ! カメラが〜・・・!」
 場所が場所だけに片手すら離すわけにいかず、落ちるカメラを見送ることしかできませんでした。しかし、幸運なことに、落ちたカメラが靴に当たり、わずかなスペースしかない足元に跳ね返ってきたのです。
 一番緊張しているときの出来事でした。あれがカメラではなく、自分自身だったら・・・・なんてと考えると、恐ろしくなります。ひょっとすると、カメラが身代わりになってくれたのかも・・・。


 A沢のコルでカメラを確認してみると、シャッターボタンの下に小さな凹みがあり、写真は撮れるのですが、ズーム機能が動きません。
 身代わりのことを考えていると、時代遅れのカメラが愛おしくなり、両手で握り締めていました。


 振り返ると、南岳と長谷川ピークが青空に映えています。あそこから、もうここまで来たんですね〜。知らず知らずのうちに、緊張していたのでしょう。核心部分の記憶が飛び飛びにしかありません。
【飛騨泣き】
 まだまだ、油断はできません。飛騨泣きが控えています。しかし、大キレットでナイフエッジに慣れたためでしょう。飛騨泣きの方はあまり緊張せずに、スルッと通過してしまいました。
 ここは・・・という箇所には、しっかりとした金属のステップと鎖が設置してあるので安心です。
 飛騨泣きのナイフエッジを越えたところでコースを振り返って見ましたが、「アレッ、あんな凄いところだったっけ・・・・?」という感じでした。
 南岳で、北穂から来られた方と擦れ違ったとき、その方は「大キレットより飛騨泣きが怖かった。」と仰っていました。進行方向によって随分と感じ方が違うのかもしれません。


 飛騨泣きを通過すると、次は北穂の急登が待っています。この先、どこをどう登るのか、遠目ではさっぱり分かりません。ペンキマークだけが頼りです。

 写真は、北穂高岳北壁です。ここを垂直に登るロッククライムの世界は、想像を絶します。
 
【北穂高岳小屋】
 計画では、穂高岳山荘まで行く予定でしたが、友人の膝の調子が悪く、明日の回復を待って、奥穂経由で岳沢へ降りるか、それとも北穂を涸沢に下るか決めることにし、今日は北穂岳小屋に素泊まりすることにしました。
 Aさん、お付き合いありがとうございます。

 北穂の小屋には、炊事場がないため、炊事はテラスで行わなければなりません。気温が下がらないうちに夕食準備です。
 北穂のテラスから見る槍ヶ岳が大好きで、穂高というと北穂を外せません。
 夕食は、槍ヶ岳をおかずの一品に加え、「うなぎの卵とじ」&「金時豆」です。
 翌朝、4時頃から外を眺めていますが、小屋の付近はガスに覆われていて何にも見えません。
 素泊まりということは、朝食もテラスで自炊です。
 お湯を沸かし始めた6時の気温は、−4℃。氷点下の北穂のテラスで朝食というのも、おつなものです。(*_*)


 6時半頃に、小屋周りのガスが晴れてきました。
 年配の男性が、キレットを見下ろしながら槍へ行くか涸沢に下るか迷っておられました。
 結局、ガスは晴れると判断され、「それじゃ〜!」と手を振って、雪がへばり付くキレットへ降りて行かれました。
 格好いい〜・・・!(^_^)/~


【北穂高岳山頂】

 ガスが晴れた一瞬に、北穂山頂で記念撮影です。
 昨夜はきっと、寒かったんでしょうね〜。北穂山頂の標識に張り付いた雪がそれを物語っています。


 7時頃、下山開始。
 友人の膝の調子が回復せず、予定を変更し、涸沢へ下ることにしましたが、膝の痛みが強く、歩みは遅々として進みません。上高地まで、相当時間がかかりそうです。景色を楽しみながら、のんびり下山です。
 友人は「タケコプターをくれ〜!」とか「タクシーを呼んでくれ〜!」とか、やけくそになりながら、下り道と格闘していますが、彼の暗い気持ちとは裏腹に、空は快晴。穂高の雄大さに抱かれ、ルンルン気分です。


 これまで黒褐色の岩稜が目に焼きついているため、赤や黄色に色付いたナナカマドの紅葉が、初めてカラーテレビを見たときのように鮮烈に目に飛び込んできます。
 綺麗ですね〜。一番後を歩いているので、振り返えるたびに写真を撮っていたら、カメラには同じような写真ばかりが収まっていました。
【涸沢小屋】
 二十数年前、涸沢で初めて立ち寄ったのが、涸沢小屋でした。
 穂高の稜線へは、北穂のコースしか利用したことがなく、その取り付きに近いということから、涸沢ではここばかり利用しています。

 残念ながら、車の運転が控えているので、カールを見上げながら生ビール・・・というのは見送りです。

 北穂の下山中は快晴だったのですが、涸沢小屋に着いた頃は、雲が湧き出して日差しがなく、少し鮮やかさに欠けてしまいました。
 それでも、「涸沢 ヤッホー!」です。
【徳沢で昼食】
 涸沢から休憩をとらず、一気に徳沢まで下ってきました。
 ここで、今回の行動中、最後の食事です。メニューは、スパゲッティ・カルボナーラ。
 汗臭い男たちには似合わないハイカラな名前のスパゲッティですが、作り方はラーメンと同じ、茹でて味をつけるだけです。 
 空きっ腹だったせいもあり、とっても美味しかった〜!(~o~)
 この味、癖になりそうです。


【河童橋】

 徳沢からの平地では、友人も普通に歩けるまでに回復。
 河童橋では、自分たちもその1人ですが、あまりの観光客の多さに驚きました。今日は月曜日なんですけどね・・・。さすが全国区の観光地です。

 河童橋をバックに、3人で写る最初で最後の記念撮影です。


 キレットを通過中、北穂の小屋から我々を撮影していた方が写真を送ってくれるそうなので、写りのいいのがあればUPします。



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